私のゼミで卒論を書く目的は、自分の社会科教育論や歴史教育論、地理教育論を深め
ることです。ですから、次の3つの動機だけで卒論を書こうとしても、私に
「そりゃあ、だめだな」
と言われます。
1.歴史学や地理学の新しい動向を取り入れて教材開発をしたい。
2.面白ネタが見つかったので、それをもとにして、子どもたちが楽しいと思う授業
を開発したい。
3.情報化の進展、国際化の進展といった最近の社会の動向を取り上げて教材
を開発したい。
なぜ、上の三つの「動機だけ」ではいけないのか。
端的に言えば、社会科論の探求がないからです。歴史教育とは、あるいは社会科教育
とは子どもたちにどのような力をつけるべきものなのか。この根本的な問いに基づい
て授業開発・教材開発が行われないと、社会科の研究は単に歴史学や地理学、社会学
などの下請け、いやそれどころか独自の学的なるものがなくなってしまうのです。
このように抽象的に言われても分かりにくいかもしれません。ゼミ生たちが書いたも
のを実際に読んでみてください。ここには容量の関係で、「はじめに」の部分と「指導
案」の部分しか載せていませんが、それでも、社会科教育のゼミで書く卒論というもの
がどういうものか、地理や歴史のゼミで書くものとどう違うのか、ということが少しは
見えてくるだろうと思います。