平成29年度 卒業論文


 この年度の学生は、社会科教育の授業づくりには大きく二つの契機――一つが学問の成果を教えるという視点からみたときに古くさいものになっていないかであり、もう一つが公民的ないしは市民的資質の育成という視点からみたときに意思決定力育成とか社会参画力の育成とか、既成のものを踏まえ何とかそれを乗り越えようとしているかです――が必要だ、ということをよく理解して卒論を書いてくれました。

 でも、改めて振り返ってみると、公民関係と歴史関係だけになっていて、地理的分野のものがありません。私の好みを自ずと反映してしまったのでしょうか。でも、来年度は、もう地理的分野の者が書かれるということが確定しています。

 ここには、卒論の「はじめに」の部分だけを載せています。




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「『メディア・リテラシー』を育成する『情報産業学習』」 Y.井上
日本では、メディア・リテラシーを育成するための授業は、国語から始まった。カナダの影響を受けてのことである。その後、社会科に入り、学会誌には吉田の論文などが登場し、社会科の時間だけでは発信者を育てるところまでは出来ないから総合との融合単元にすべきだという主張をした。やがて特集号も出、現在は京都女子大学の松岡靖が最も熱心に研究に取り組んでいる。松岡はメディアの対象をインターネットにまで広げた。井上の卒論は松岡の最新の研究成果を踏まえたものであり、情報の発信者として小学生をどう育てるべきかというところまで射程に入れた授業づくりに取り組んでいる。
井上_卒論(ホームページ用).pdf
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「差別を見抜く力を育成するための社会科人権教育の開発」 S.黒澤
黒澤は、現在、小学校の社会科授業で広く見られる「共感的理解」型の授業では、差別を見抜き、これと闘うための力を育成するには不十分であるという思いから、この卒論を書いた。差別を見抜くためには、なぜさばつが生じるのかを観る社会認識の力がまず必要だと考え、これを梅津正美の提唱した「規範反省学習」によって養おうとした。だが、これだけでは、差別をなくすために、社会全体として何ができるかを考える力を育成できないということで、こちらを吉田正生の「社会参画力育成」の考え方で補おうとした。
黒澤_ホームページ用.pdf
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「『社会参画学習』を取り入れた伝統文化に関する授業開発」 T.金野
伝統・文化の学習についても、小学校では「共感的理解」型の者がよく行われる。社会科でやりにくい場合には、「相互つ的な学習の時間」と接合させて、地域に伝わる神楽や獅子舞などが取り上げられる。しかし、この論文は、それとは違い、社会参画学習の考え方を取り入れ、地域全体で、地域の伝統芸能を守っていくためにはどうしたらいいかを考えさせようとするものである。
金野_ホームページ用卒論.pdf
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在日韓国・朝鮮人を取り上げた国際理解学習の授業開発  S.志賀
志賀は、ヘイトスピーチを何とかなくせないものかというところから卒論作りをスタートさせた。しかし、子どもたちにヘイトスピーチはいけないことだと教師が熱く語るだけの授業にしないようにするにはどうしたらいいだろうかとだんだん考えを深めていった。まず、日本人のアジア認識を捉えさせる必要があるというところに行きついた。この学習は歴史学習になるが、単なる歴史学習にせずに梅津正美の「規範反省学習」で、明治・大正の対アジア観を学習させる授業を考えた。だが、ここまででは歴史学習に終わってしまい、現在のヘイトスピーチを取り上げた学習に出来ない。この部分の学習を展開するために志賀は金ジョンスンの「対話型」国際理解教育の手法を参考に授業モデルを創り上げた。
志賀卒論_ホームページ用.pdf
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「『資料読解力』を育成する社会科歴史授業開発」  S.島田
島田が付けた論文名は、本人が3年生の後半ぐらいに辿りついた時点でのものである。4年生の9月ごろには、島田のなかでは「現代社会が抱える問題」に主体的に向き合える力を育成する歴史授業の開発がメインテーマとなっていた。それにもかかわらず、標記のタイトルのままにしたのは、ここで資料としたビゴーの風刺画から「猿まねをすると外国人に馬鹿にされる。主体的に国際社会での在り方を考えることが大切だ」というメッセージを読みとらせたい、という意識が強くあったからである。島田のこういう強い思いを大事にしたかったので、タイトルを変更させなかった。
島田卒論_0ホームページ用.pdf
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「明治期の国民国家形成を学ぶ歴史文化学習の開発―唱歌を教材として―」  M.中村
吉田は、現在の社会科文化学習の在り方に疑問を持つようになった。明治期については、明治政府の文化政策が、国民づくり・国家づくりと関連しているということを学ばせないと、文化学習は唯、芸術作品とその作者たちを暗記させるだけの学習になってしまう。楽譜を読むことが苦手な吉田が、明治政府の美術政策を、音楽大好きという中村が卒論で唱歌を採りあげた。
中村_卒論(明治期の国民国家形成を学ぶ歴史文化学習の開発).pdf
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「社会問題を解決する力を育成する中学校社会科歴史授業の開発」―新選組を教材として― C.林
山内の卒論と同じく、歴史学習を単に歴史的知識や歴史学者たちの思考技能を学ばせることで十分という考え方を乗り越えようとしたものである。林は、今の子どもたちは自分で自分の限界を設定しすぎると感じている。そこで、身分制社会のなかの武士でもないのに、国事に奔走した新選組を教材として、子どもたちに自分の生き方を考究させようとする歴史授業単元を構成しようとした。
林卒論(社会問題を解決する力を育成する中学校社会科歴史授業)ホーム.pdf
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「政策批判能力を育成する社会科主権者教育の授業開発」  M.森
政治学習は単に憲法の学習や政治制度の学習の終わらせるべきではない。公的な機関が打ち出す政策を批判的に見て代替案を提案できる主権者を育成することを目標とすべきだという主張に拠り、小・中の系統を意識して授業プランを開発した。
 教材は、横浜市の学校給食である。
平成29年度卒論_森(政策批判学習).pdf
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「意思決定力を育成する社会科歴史授業の開発 ー津田梅子を教材にして―」  M.山内
社会科教育の目標は、公民的資質(の基礎)の育成だという。学習指導要領にはそう書かれている。だが、現実の多くの授業は、単に歴史的な知識を伝達するだけ、あるいは(子どもたちの多くは歴史家をめざしているわけでもないのに)歴史学の方法や考え方を伝達するだけのものになっている――そんな問題意識の下に、この授業プランはつくられている。
山内_卒論(ホームページ用).pdf
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 この学年は、特に仲が良く、いつもいいなあと思ってみていました。卒業後も互いに連絡を取り合って助け合う中になることを望んでいます。