「夢さ志」は、「むさし」と読みます。
私が北海道教育大学旭川校から文教大学に赴任してきた2010年4月は、東京スカイツリーがまだ建設中でした。研究室の窓から毎日眺めていると、少しずつですが高くなっていくのがわかります。最先端の技術を使って建設しているのでしょうが、
「ローマは一日にして成らず」
毎日の地道な積み重ねによって、出来上がっていくものなんだと思わされました。
北海道の時と同じく、ここでも「ゼミ誌を出す!」と決めたときに、学生たちに何とか「日々の地道な積み重ねが大切であることを伝えられないか」、「だから、スカイツリーに因んだ名前にできないか」ということで選んだのが「むさし」でした。634メートルという高さに因むものであると同時に、文教大学が昔の国名でいえば「武蔵の国」にあるということで、ぴったりの名前だと思いました(自画自賛)。さらに、若者らしい生き方をしてほしいという思いで「夢」という字と「志」という字を選びました。
ゼミ生のみなさんは、「夢さ志」に成長の跡を刻みつけていってください。
卒業生のみなさんは、疲れたときには「夢さ志」に原稿を寄せていたころのことを思い出して元気を取り戻してください。
今年度、すなわち、令和元年度(2019年度)卒業する4年生12名を、本ゼミに迎え入れることが決まったときに発刊したものです。
巻頭言の中に次のような文章があります。
去年の今頃は、巻頭言にこんなことを書きました――「私の不徳の致すところで、新3
年生のゼミ生がわずか2名と少なくなってしまいましたが、『ピンチはチャンス』のチャ
レンジ精神で、ゼミを一層、皆さんにとって楽しくて勉強になるものにしていきたいと思
います。力を貸してください」。
今年度は、15名の2年生がこのゼミを希望してくれました。有難いことです。でも、15名という数字は、わ
れわれ社会専修の教員で決めた一ゼミ当たりの学生定員を大幅に超えています。それで、12名に減らさせても
らいました。 それでもまだ多い人数です。この人数の多さ故に心配なことが三つあります。
ということで、「12名の卒論を指導しきれるかという」心配、「チームワークが乱れるのではないかという心配」などをあげました。でも、杞憂でした。彼らが3年生のとき、下の学年(今の3年生)が13名が私のゼミを希望してくれました。その理由を訊くと
「先生の講義を受けていたときは、絶対に先生のゼミに行くのはやめようと思っていた。(だって怖かったから)。でもゼミ見学に行って先輩たちの姿を見たら、すごいな。自分も1年経ったら、あんなふうになっていたいと思ったのでこのゼミを希望しました」という嬉しいような悲しいような返事がほぼ全員から返ってきました。
こういうすばらしい学生たちを、私の最終年度の4年生に出来たことは望外の幸せでした。